槍ヶ岳北鎌尾根 山行記録

期間:1997年7月19日〜21日
メンバー:田所,荒木,井坂(記)

7月19日(土)晴
 高瀬ダム(6:45)-林道終点(7:45-8:00)-名無避難小屋(8:15)-湯俣(9:05-30)-
 1430m付近?の悪場(10:00-11:00)-1560m付近の徒渉(12:30-14:00)-
 千天出合(14:20)-1670m付近の徒渉(14:50-16:00)-幕営(16:30)

7/18 23:54新宿発急行アルプス85号に乗車.(平塚-信濃大町 \6720)
当初の予定では23:50発の急行アルプス・デラックス車両(^_^)に乗る予定だっ
たが,我々が駅に着いた21:30の時点で既に長蛇の列(指定席は2週間前には売
り切れ)で仕方なく,アルプス85号・貧弱車両(T_T)に乗った.
85号では椅子に座ることができたが,通路はしゃがんだ乗客と荷物で満ちており
トイレに行くときは肘掛けの上を歩いて行くしかない状態であった.

列車の中はザワザワしており良く眠れないままに信濃大町着(5:10).
改札を出ると電話予約していたタクシーが「イサカ様」の看板を掲げていた.
相乗りの男性1名と共に大町駅発(5:40).東京電力ゲート着(6:15).
ゲートが開くまで登山指導所に山行計画書を提出,アプローチの写真を見せて頂く.
ゲートの内側には大町名鉄タクシー,アルプスタクシー各5台,合計10台の車しか
入れない様で,順番待ちの車が数台あったが我々は6:30の開門と同時に入れた.
なお,1台の車には乗客4人までと決っているそうです.
程なく高瀬ダムに到着,歩き始めた(6:45).タクシー代は消費税込み(\7020)

名無避難小屋(8:15)は釣り用(?)で土間+4畳部屋で薪もあり結構快適そうだ.
湯俣の吊橋を渡ってからは道が悪くなる.水際をヘツリ気味に通過するところで
(ザイル使用)順番待ちなどで約1時間要する.なお5m上方にフィックス
ロープがあり,これを使用して通過しているパーティーもあった.

ヤブありガレありの荒れた道を1時間ほど進むと川原に4,5人たむろっていた.
周囲を見渡すと対岸に橋の残骸があった.
こんな所で引き返す訳にもいかない,という思いはおそらく共通であろう.
ここを徒渉するしかない様であるが,皆お互いを伺っている様だ.
流れは速い.川幅は約10m.水深は深いところでおそらく胸ぐらいか.
慎重に徒渉点を探す.
幸い対岸に向かって3mの所に岩があり,そこから力いっぱいジャンプすれば
深みを飛び越して水深が腰ぐらいの安全地帯まで行き着けそうである.
空身でザイル確保してもらう.衣服や靴を脱ごうかと思ったがやめて,そのまま
入水する.あまり冷たくない.
水は腰ぐらいまでで予定の岩までたどり着いて上がる.ザイルを5m程手繰り寄
せループを作る.呼吸を整える.ザイルを上に投げると同時にジャンプする.

呼吸を整え...< photoTadokoro >

ジャンプ!! < photo Tadokoro >

対岸から別パーティーを撮影

着水と同時に泳ぎ無事対岸に立つことができた.
ザイルを立木に固定して3人分のザックを空中輸送する.
他のパーティーの女性が私のマネをして徒渉を試みるが流される.
幸いザイルで無事回収された.フィックスロープを使用して田所・荒木が
徒渉して,次に他パーティーのメンバーが徒渉した後,
我々は自分達のザイルを回収して,先を急ぐ.

千天出合を過ぎて天井沢の徒渉点(P2基部)に到着する.
出合を過ぎると理屈では水量は半分になるはずだがそうは見えない.
むしろ流れは強くなっているようだ.徒渉点を探して上流に進んで行くと,
幸いにも両岸からの倒木が「人」の字の様になり天然の橋が出来ていた.
ザイル確保して空身の荒木が倒木に馬乗りになりズリズリ進みフィックス
ロープを張る.田所・井坂が渡っていると先ほどのパーティーが追いついてきて
我々のフィックスロープを使いたいというので許可する.
その男性は先程と同様に我々のザイルを使用して横断し自分達のザイルを
フィックスして,我々のザイルを返してくれた.
彼らはN山岳会所属で今回は女性2名との3人パーティーだそうだ.
他に単独行の1名が「橋」を渡った.
我々はすぐ近くの平地で,N山岳会パーティーも近くで,幕営する.
水平がとれており快適なテント場である.
単独行者はさらに進む様だ.おそらく北鎌沢をつめる予定なのだろう.


7月20日(日)晴
 起床(2:45)-出発(4:10)-北鎌尾根上2000m(5:05-15)-P2[2120m峰](5:40)-
 北鎌のコル(10:20-40)-P8[2749m峰]への登り約2700m地点?(11:25-40)-
 独標[2899m峰]前のコル(12:25-13:05)-北鎌平(17:45-55)-槍ヶ岳(19:30-35)-
 槍岳山荘(20:00)

暗い中,テントを撤収し30m程下流方向に歩いてから尾根を登り始める.
はじめは適当に歩いていたが,はっきりした踏み跡に気付きこれを登る.
徐々に明るくなるなか,木の根や残置ロープをつかんで急斜面をガンガン登る.
やがて傾斜が緩くなり尾根上にたどり着いた.尾根上は多少ヤブもあるが
はっきりした踏み跡があり歩き易い.この時点では今日中に槍沢ロッジまで
降りられるかも知れない,などと甘く考えていた.
間もなく岩峰(P4?)が現れる.直登は辛そうなので,天井沢側から巻く.
懸垂下降した後,いやなガレ場を登り尾根に戻る.

P5,P6,P7付近は地図で読めない小ピークが連続するが概ね尾根上を歩く.
安全のため1回ザイルを出して懸垂下降する.
北鎌のコルに下っている時,北鎌沢右俣を登って来る3人パーティーが見えた.
P8[2749m峰]を登る途中(2700m?)で休憩中のこのパーティーに追いつく.
大天井岳の貧乏沢を下って来たそうである.
彼らのリーダー(プロガイド?)はメンバーを励ますためか「あと1時間で独標ですよ!」と
言っていた.しばらく前から時間が気になり出した我々にも心強い言葉であった.
しかし我々は,独標前のコルの雪渓で給水した(約40分要した)こともあり,
独標付近に着くのはこれから3時間後であった.なお,独標は千丈沢側から巻き頂部は通らなかった.

2級の岩登り  < photo Araki >

休憩      < photo Araki >

ガレ場トラバース(踏跡在り)

独標以後,岩峰が連続するがほとんど千丈沢側を巻く.
途中で男性2名のパーティーに追いつく.また先行してるはずN山岳会に追つ
かれた.独標を登って来たそうだ.
後ろを見るとさらに数人の姿が見えた.彼らは途中でビバークしたと思われる.

槍ヶ岳と小槍

北鎌平はテント数張りが張れそうな広さがある.石を並べて造った防風ブロック
もあった.またウレタンマット付きの赤いザック(60Lぐらい)が残置されていた.
槍ヶ岳への登りは踏み跡をたどって千丈沢側から登り始めるが嫌なガレ場を歩か
された後,岩稜上に到達した.こんな事なら初めから岩稜を登った方が楽だった.

最後の登りの途中で北鎌尾根


山頂にて、フラッシュを使ったため写真
では真っ暗ですが、実際はまだ明るかっ
たです。ヘッドライトは下山の途中で暗
くなるため早めにつけました。

疲労と焦りから適当なルートを登ると,見覚えのあるほこらと白ペンキで書かれた
「キタカマ」の文字があった.19:30槍ヶ岳着.ここで乾杯する為のビールを持参
しているのだが時間が無いので諦める.簡単に記念写真だけは撮って即下山.
暗くなる中ヘッドライトを用いてゆっくり降りる.
ハシゴと鎖と白ペンキに導かれて槍岳山荘に到着(20:00).


7月21日(月)
 起床(4:30)-出発(6:40)-槍沢ロッジ(9:30)-横尾山荘(10:30)-徳沢園(11:10-30)-
 河童橋(13:00)-上高地バス停

上高地バス停にて,昨日今日とまったく無線連絡の取れ無かった別動隊
(上高地-水俣乗越-槍ヶ岳-槍沢-上高地)と合流.
バス停は非常に混雑しており2時間以上待って乗車.(上高地-沢渡 \1350)
沢渡駐車場の車に同乗させてもらって帰宅.


感想
1日に16時間も行動したことは余り記憶もなく,かなり疲れた.
また,久しぶりのガレ場歩きは精神的に非常に疲れました.
来年のGW山行の偵察と思っていたのですが,ちょっと考え直しています.

田所さんの高山植物解説は大変勉強になります.またお願い致します.

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